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【特集】今話題のヴェルテ・シティ・ドゥモア・TS TRADE。会社の登記簿謄本を読み解くことで会社の実態に迫る。登記簿謄本の読み方


 こんにちは、あーるです。当ブログでも何度か明かしているように、私は銀行勤めをしており、日々お客様の決算書や新規先なら登記簿謄本に商流調査、ネット調査などに勤しんでいますクラウドファンディングって、金融機関職員から見ればおかしなことだらけだよね?って思う場面が多いことは記事にしていますが、今回は時々インターネットを騒がせる会社の実態って何なんだろうという調査記事。ずばり、登記簿謄本から読み解く企業の実態です。

本稿では、実際の登記簿謄本を用いてインターネット上で話題となった会社が、どのように屋号を変えたり、悪評を消そうとしているのか、その手法を解説します。金融機関職員にとっては当たり前な知識ですが、他の業種の方でも今後新規の取引時に謄本を貰ったとき、どう読んでいくべきなのかの参考としていただければ幸いです。



商業登記簿謄本=会社の戸籍(登記簿)を書き写したもの


登記情報提供サービスを利用すればインターネット経由で誰でも登記簿を閲覧可能

まず、このページで説明する「商業登記簿謄本」とは何なのかという基礎知識から。会社を経営している方や、金融機関職員ならお馴染みの商業登記簿謄本、これは、会社の登記簿の内容を写したものです。ただ、「写した」といっても、現在登記は電子化されておりコンピューターで印刷したものがこの登記簿謄本です。

この会社の登記簿には会社の商号(会社名)、本店(会社の所在地)、資本金の金額、発行株式数、役員の名前といった会社の基本的な情報が記録されています。いわば、会社という「法人」の戸籍みたいなものと思ってもらえればよいかと。この登記簿の記載事項に変更があった場合、例えば代表者が変わったり、本店が移転したりしたときには期間内(原則2週間・支店は3週間以内)に登記をしないと罰則もあるというもので、誤魔化しが効かないのも特徴。怪しい会社であっても、この登記簿からは逃げられないというわけです。

この登記簿は誰でも見ることができるのがルール。その理由は、不動産取引や商取引などの安全を図るために事実関係や権利関係などの情報を一般に公開するため。また、代表取締役の氏名及び住所も公開され、訴訟発生時に会社の事務所がない場合でも裁判書類を送付することが可能になっており、ペーパーカンパニーであっても代表者の住所は追えるようになっているわけです。

登記簿から分かることと、分からないこと


登記簿謄本例:小米技術日本株式会社

そんな登記簿から分かることで重要なのが、誰が社長で、どこに会社があるのか、ということ。上述したように取引で問題が発生したときに、社長を訴えるという場合には重要ですし、事務所を閉鎖していても登記上の住所には事務所があったーなんて場合にも有効です。

ただ、登記簿からはわからないこともあり、その中で最も重要なのが株主が分からないこと。世の中の中小企業の多くはオーナー社長であることが多く、株式の50%以上を親族で保有している場合も多いですが、近年のベンチャー企業では株主が複数人に渡り、実質的に会社を支配している人(=実質的支配者)が誰であるか分かりづらい例も増えてきました。

実質的支配者でない雇われ社長でなく、オーナーである実質的支配者については株主名簿を閲覧しない限り分からないわけです。なお、一部の国(香港など)の登記簿謄本では株主も記載があるため、個人的には株主名簿も広く公開されるべきだと思っています。(現在の日本の法令では、株主名簿は債権者であれば請求可能です)

話題のあの会社の謄本を読む。本店移転は要注意

ヴェルテ:ガジェット界をざわつかせたあの会社

一時期小型スマートフォンの「jelly pro」で無在庫輸入代行を行い、実質的には商品が届かなかったり大幅に遅延したり、当初価格から購入手続き後に値上げを行ったりと様々な悪評を誇った「株式会社ドゥモア」の謄本を読んでいきましょう。

※ヴェルテについては、eps_rさまのブログに詳しくまとめた記事があります

株式会社レッドスター登記簿謄本

まずはヴェルテの代表者と言われている松川氏が最初に立ち上げていた企業、株式会社レッドスターから。平成13年に資本金1,000万円で創業し、現在の住所は神奈川県厚木市みはる野。代表取締役の松川氏の住所と本店所在地が一致しているため、家兼事務所という感じなのでしょうか。


謄本を見慣れている人が絶対に見落としてはいけないのが、一番下の「登記事項に関する記録」。ここにはその会社の登記の以前の情報を辿るために重要な情報が載っています。平成26年7月29日に丸の内1丁目1-3から本店移転しているとのこと。そもそも丸の内1-1-3だなんてすごいところにオフィスがあるもんですね。ただし、これは丸の内トラストタワーにあるバーチャルオフィスです。(建替・再開発で住所は変更)

法人登記の特徴として、本店登記地の登記所が本店移転によって変わると、前の登記所にある登記は閉鎖され、移転先の登記所で新しい登記がなされます。このため、本店移転前に役員が変わったりしていても、その情報は移転先の登記には載らず、抹消事項(下線の引かれている内容)のない綺麗な登記簿になるのです。

  

ということで、移転前の丸の内にあったときの閉鎖登記簿を請求してみましょう。そもそもレッドスターという会社は当社の公式サイトを見てみると、1996年に創業されています。当初は個人事業主くらいだったのでしょう、平成13年=2001年に株式会社化して設立いるとのこと。登記簿でも平成13年設立というのがわかります。

その平成13年に設立された当初は代表取締役は平成14年に重任登記がされている松川氏、その他に多くの取締役がおり監査役も設置した、取締役会設置会社であり監査役設置会社でした。しかし、平成16年6月30日を境に代表取締役の松川氏も含めてほぼ全員が退任(監査役の久保田氏は平成17年6月30日退任ですが、おそらく登記時のミス)し、取締役が誰もいない状態に。実質的にはこの時点で休眠会社となったといえます。

その後平成26年8月に松川氏が代表取締役に就任し、その直前に本店が現在の厚木市に移転。8月6日に平成16年の役員退任を一気に登記しており、それまでは一切手つかずの登記でした。あとは、みはる野の登記は松川氏のみのキレイな状態となり今に至っているというわけ。


次に見ていきたいのが話題の通販サイト「ヴェルテ」の運営者として名前が出ている株式会社シティ。平成24年に会社合併をしている資本金1万円の会社。なお、発行済株式は1万株のため、株価の額面は1株1円です。

まず注目したいのが、会社の目的の多さ。ただガジェットの輸入をしたいだけなら、レッドスターと同じくらいで良いのに、これでもかというくらいに目的が記されています。それこそ、エステティックサロンの運営から保育業、コンサル業に結婚相談所、人材派遣業まで。目的欄の内容が広すぎる事をもってして怪しいと言うのは乱暴ですが、金融機関からすると「何を事業内容としているのかわからない(実質的なところはともかく)」となり印象は良く有りません。


こちらのシティにも過去の住所がありました。豊島区池袋1丁目10-5から平成30年に移転したようです。ちなみにこの住所は、レッドスターの登記に載っている平成27年から平成30年までの松川氏の住所です。株式会社シティは自宅=事務所のままのようですね。


ということで、その豊島区の住所での閉鎖登記簿がこちら。ここで、平成30年に株式会社ドゥモアから株式会社シティに会社名を変更していることがわかります。また、一番下を見てみましょう平成27年10月20日までは北九州市にあったようです。北九州市


これが、北九州市にあったときの株式会社ドゥモアの謄本。そろそろ答え合わせの時間です。まず、平成24年に設立された株式会社ドゥモアは、松川氏の住所とは全く関係ない北九州市にありました。そしてその当時の代表取締役は三木薫氏。取締役では松川氏も入っていたようです。


一般社団法人国際ボディージュエリー協会のWEBサイトに「エステ ドゥモア」と三木薫氏が乗っていました。ドゥモア=シティの目的の最初は「エステティックサロン」が載っていたのはこのため。そして、最初は三木薫氏と、何らかの繋がりがあった松川氏がエステサロンのためにドゥモアを立ち上げたのでしょう。

そして平成27年10月2日に三木薫氏は代表取締役からも取締役からも辞任。松川市の会社となり、そのまま10月5日に豊島区の住所に移転しています。この時点でかなり不自然ですよね?「辞任」となっていることから、本音は三木氏を代取のままにしたかったのでしょうが、店が閉店したりしたことで、松川氏が代取にならざるを得なかったのではないでしょうか?

要はエステサロンの看板を使った会社を利用することで、松川氏の名前を隠しつつレッドスターとドゥモアの2社をうまく使って商売をしようとしていたことが推測されます。そして、ドゥモアが結局松川氏になったことで社名を変更したのではないかと、というところまでが謄本を追っていくことで推測できるわけ。


社長が突然発狂。陰謀論に走って社長交代したTS TRADE


魚拓より

魚拓より

今年ガジェット好きを騒がせた出来事と言えば高性能なジンバルを展開している中国・FeiyuTech社の国内正規代理店であった株式会社TS TRADE。2020年12月から突如実質的な営業活動を停止し、4月2日には公式サイトとTwitterで上のような謎の言動を繰り広げたあの会社。

現在はFeiyuTechの国内正規代理店は別会社に契約が移行したものの、TS TRADE社が管理していたShopify上の通販サイトは継続して運営されている状況。ちなみに、この発狂投稿を繰り広げたのは上のスクリーンショットにもあるように、「株式会社TS TRADEの河崎」氏。


当時(2021年4月2日)の魚拓より

発狂当時の特定商取引に基づく表記では代表取締役「河崎聖輝」と記載があり、本人だったのでしょう。それでは、宮崎市にあるこの株式会社TS TRADEの謄本を取得してみます。

  

驚くべきことに現在事項にも、過去の役員にも、現在の役員にもこの河崎さんという人物は載っていません。この登記簿からだと、問題を起こした河崎さんなんて人は最初から役員なんかではなく、WEBサイトを乗っ取ったのか、元々虚言癖があり自称していただけと説明されても納得がいきます。

記事執筆時点(2021年8月3日)の魚拓での表記

びっくりして現在の株式会社ティーエストレードのShopifyの特定商取引法に基づく表示を見てみると、代表取締役の名前が現在の登記簿に記載されている者と同じ渡邉氏になっています。

新たにこの株式会社ティーエストレードと取引しようと思った会社は、謄本を当社から貰ったり、WEB検索をして評判を探るでしょう。今回のTS TRADEの事件について見つけて、検索をしてみても、特定商取引法の表示も、謄本にも河崎さんはいないとなればなにかの間違いだったと思えてもしまいますよね。


ここからはどうやって事件の河崎さんを綺麗に消し去ったのか、その謎に迫っていきましょう。まず、この株式会社ティーエストレードの商号、当初載っていた「株式会社TS TRADE」と地味に違う(英語がカタカナになっている)のに加えて、実は令和3年6月15日まで株式会社ラ・ネージュというまったく別の会社名でした。

そして、会社の目的も同日付で健康食品に関しての項目が、貿易・輸出入代行業務や、インターネット通販にそっくり入れ替わっています。役員に関しても現在の渡邉氏以外の全員が3月31日に解任か辞任し、渡邉氏が代表取締役に就任しているというもの。役員がそっくり入れ替わっています


ここまで来たら次は閉鎖登記簿を探す番です。以前の特定商取引法に基づく表記に記載の「株式会社TS TRADE」で調べたら、ちゃんと閉鎖登記簿が出てきました。代表取締役は問題を起こした河崎氏のまま。令和2年3月16日に長野から移転し、令和3年6月15日に広島に本店移転をしています。そう、株式会社ラ・ネージュが株式会社ティーエストレードに商号変更をしたその日です。


あとは移転先の広島の登記簿を取得してみれば答え合わせは完了。株式会社TS TRADEは河崎聖輝氏を代表取締役のまま、広島市に本店を移転しているだけ。ちなみに、このTS TRADEの登記は謎の移転を繰り返しており、平成28年に宮崎市で設立してから、長野に移転し、その後宮崎に戻り、今の広島に移転していました。

この株式会社ラ・ネージュと株式会社TS TRADEの登記簿謄本から推定できることは、この問題を起こした代表取締役河崎聖輝氏の痕跡を消して、今後もFeiyuTech製品などを販売するために、おそらく実質休眠会社だった株式会社ラ・ネージュを新・ティーエストレードにし、旧TS TRADEをまったく違う場所に移転。また、商号を英語からカタカナにすることで、登記情報提供サービス等での検索避けを図ったということ。実質的な登記簿ロンダリングです。


もともとTS TRADEの一件に関しては注目していましたが、7月頃に代表者が変わっているという投稿を見つけ調査をしてみて、ここまで手を込んで登記簿を綺麗にしようとしているというのは驚き。カタカナとローマ字については、登記情報提供サービスでは相互検索されないというのをうまく使っており、私自身も勉強になる例でした。

マネロン対策の観点でも、今後必要になる登記簿を読む力


今回の記事では、ガジェットに関して最近話題になった企業の登記簿を謄本を使って、なにかの意図をもった登記の変更による変化から、その背景を推定してみました。エステサロンの謄本を使って代表取締役を別人にしたり、別会社の名称変更によって問題のあった人物を消し去ったり、商業登記簿謄本を読み解くことで見えてくることって意外とあるんです。

実際に登記簿を読んでいくにあたって注意すべきポイントも、この記事からもお分かりいただけたでしょうか。具体的には

  • 役員が突然入れ替わっているような登記簿
  • 本店移転を繰り返している登記簿
  • 会社の目的が雑多で、本業とまったく関係ない事項が多く載っている登記簿

この3項目は金融機関でも注意すべきポイントとして啓発されていることが多いわけ。まったく違う休眠会社を買い取って、業歴が長いように見せるというのは昔から常套手段ですしね。マネーロンダリング対策の観点からも、登記簿謄本は履歴事項も含めてチェックするのが当たり前になってきました。

実務上登記簿を見るという方はなかなか多くはないものの、個人で事業をしていて取引を持ちかけられた会社があったり、メディアに対してプレスリリースの持ち込みをしてきた初めましての会社があったりしたときには、ぜひ参考にしてみてください。また、少しでも実態のない企業や、消費者に損害を与えるような企業による被害が減ることを祈るばかりです。



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